「電力会社の者ですが、分電盤の点検に伺いました」。そう言われて業者を家に上げたことはありませんか。分電盤点検を装った悪質商法の相談が、この1年で5倍に急増しています。
いま何が起きているか
国民生活センターは2026年9月16日、「分電盤の点検商法にご注意ください」と全国に注意を呼びかけました。分電盤(ブレーカーが入っている配電盤)の点検を口実にした勧誘トラブルの相談は、2022年度14件→2024年度1,290件→2025年度6,545件と急増し、2025年度は前年度の約5倍。2026年度も7月末までに早くも2,223件寄せられています。相談者の8割超が70歳以上で、当初は南関東中心でしたが北関東・九州北部にも広がっています。
千葉県茂原市では8月30、31日、千葉豪雨で浸水被害を受けた67歳男性宅に業者を名乗る男3人が訪れ、「市役所から依頼された」「分電盤に異常があり床の張り替えが必要」とうそをつき、320万円をだまし取ろうとしました。男性が市役所に確認したことでうそが発覚し、3人は9月1日、詐欺未遂の疑いで逮捕されています。
手口の解説
分電盤点検商法には、共通する4つのステップがあります。
①電話や訪問で接触する
「電力会社の者ですが」「地域の点検で回っています」と近づき、点検を持ちかけます。
②不安をあおる
「法律で15年しか使えないと決まっている」「このままだと漏電して火事になる」など、根拠のない説明で危険をあおります。
③その場で高額契約・現金を要求する
契約書をその場で用意し即決を迫ります。相場を大きく超える金額を請求され、自治体の依頼を装って信用させるケースもあります。
④災害後は便乗する
台風・大雨で浸水や停電があった直後の住宅を狙い、「保険で実質無料」と持ちかける手口も確認されています。だまされる方が悪いのではなく、不安につけ込む側がプロなのです。

実際のセリフ・文面
「電力会社のものですが、分電盤の点検に伺います」
ここが見抜くポイント:電力会社(送配電事業者)が個別の家庭を回って無料で分電盤点検をすることは通常ありません。名乗られても、その場では信じないでください。
「分電盤の耐用年数は法律で15年と決まっている。このままでは漏電して火事になる」
ここが見抜くポイント:分電盤の交換を法律で義務付ける規定はありません。「法律で決まっている」は不安をあおる常套句です。
「市役所から依頼されてきた」「分電盤に異常がある、床の張り替えが必要」(茂原市の事例)
ここが見抜くポイント:自治体が民間業者に個別の住宅点検を依頼し訪問させることは通常ありません。不安なら業者はいったん帰し、市区町村の代表番号に自分でかけて確認してください。
今日からできる対策
✅ 電話・訪問でその場で契約しない(今日から) 「家族に相談してから決めます」と伝え、いったん業者を帰してください。
✅ 点検・交換の話が出たら、契約中の電力会社に自分で確認の電話をかける(5分) 業者の名刺ではなく、検針票や請求書に書かれた公式番号を使ってください。
✅ 「今日中に」「今すぐ」と急がされたら、その場ではっきり断る 即決を求める勧誘は悪質商法の典型的なサインです。
✅ 台風・大雨の被害を受けた直後は特に警戒する(今夜のうちに家族と確認先を共有) 自治体の依頼と言われたら、市区町村の代表番号にかけ直して確認してください。
✅ 契約前に消費者ホットライン188に相談する 少しでも不安があれば、サインする前に電話してください。
家族ができること
離れて暮らす家族は、今日中に次のことをしてください。
- 📞 「点検に来た業者とその場で契約しない」ルールを電話で伝える(電話一本・5分)。台風・大雨の後は特に要注意です。
- 🏠 実家の電力会社の公式番号を検針票で一緒に確認し共有する。業者の名刺ではなく公式番号に頼れるようにします。
- ☎️ 大雨・台風の後は、親の家に一本電話を入れて業者の訪問がなかったか確認する。訪問直後がもっとも危ない時間帯です。
よくある質問
Q. 本当に分電盤の交換が必要な家もあるのでは?
A. 分電盤は経年劣化しますが、法律で交換周期が定められているわけではありません。気になる場合は、契約中の電力会社や地元の電気工事店に自分で連絡し、複数社から見積もりを取ってください。
Q. すでに契約書にサインしてしまいました。もう解約できませんか?
A. 訪問販売の場合、原則として契約書面を受け取った日から8日以内であればクーリングオフで無条件解約できます。まずは書面の日付を確認し、すぐ手続きしてください。
Q. 名刺や身分証を見せられて信用してしまいました。どうすればいいですか?
A. 名刺や身分証は偽造・自称の可能性があります。会社名が実在するか、電力会社の公式サイトやカスタマーセンターに問い合わせて確認してください。
もし被害に遭ったら
- 💬 消費者ホットライン「188」:契約前・契約直後の相談、クーリングオフの手続きを教えてもらえます。
- 📞 警察相談専用電話「#9110」:脅すような言動やすでに現金を払ってしまったなど、犯罪性が疑われる場合はこちら。
- 🚨 110番:業者がまだ家にいる、脅されているなど緊急性が高い場合はためらわずに。
その場で契約してしまっても、自分を責める必要はありません。法律を装った言葉で恐怖心をあおるのが、こうした業者の常套手段です。

分電盤は家の奥にあって、なかなか自分では確かめにくいものです。だからこそ「点検に来ました」の一言を、まずは疑ってみてください。今日、電力会社の公式番号を家族で確かめておくだけで、明日のあなたを守れます。