「あなたが送った荷物に現金が入っていた」。そんな電話を信じたばかりに、現金と金(きん)合わせて3300万円を失った70代女性がいます。郵便局員、警察官、検察官と次々に名乗りを変える新しいなりすまし詐欺です。
何が起きたか
広島市安佐北区に住む70代の女性が2026年8月、日本郵便の社員を名乗る男から「あなたが送っている荷物に現金とキャッシュカードが入っていた」という電話を受けました。電話はそのまま警視庁の警察官を名乗る男に代わり、「詐欺事件を捜査している」「家宅捜索であなた名義のキャッシュカードが見つかった」と告げられたといいます。
女性はSNSを通じて指示され、口座から毎日50万円ずつ引き出して自宅で保管するよう求められました。後日、検察官を名乗る男が自宅を訪れて現金を回収したうえ、「金(きん)も調べる必要がある」と言われて購入させられた金2380万円相当も持ち去られ、被害総額は現金と金を合わせて3300万円余りにのぼります。広島県警は9月28日までにこの被害を公表し、「警察官や検察が現金を預かることはない」と注意を呼びかけました。
同じ広島市内では西区でも、70代女性が「あなたにも逮捕状が出ている」と偽の警察官・検察官を名乗る男らにだまされ、8月中に3回に分けて現金2868万円を振り込まされる被害が起きています。同時期に同じ手口が複数の家庭を狙っていたことになります。
警察官になりすまして資産を差し押さえると偽り、金塊を買わせて奪う「ニセ警察詐欺」は全国で急増しており、警察庁によると2026年1〜5月だけで被害額は約45億円にのぼります。警察庁は7月、金地金を扱う業界団体に不審な取引があれば情報提供するよう要請しました。
手口の解説

今回の広島の被害は、次の4段階で進みました。
①郵便局員を名乗り接触する
「あなたが送った荷物に現金とキャッシュカードが入っていた」と電話をかけ、身に覚えのない話で動揺させます。
②警察官に電話を代わり不安をあおる
「詐欺事件を捜査している」「家宅捜索であなた名義のキャッシュカードが見つかった」と告げ、自分が捜査対象であるかのように思い込ませます。
③SNSで誘導し、現金・金を用意させる
「資産を調べる」名目で、毎日決まった額を引き出して自宅に保管させたり、金(きん)を購入するよう指示したりします。
④検察官を名乗る人物が自宅に来て回収する
振り込みではなく、自宅を直接訪れて現金や金を受け取っていくのが今回の特徴です。だまされる方が悪いのではなく、複数の役を演じ分けて信じ込ませる側がプロなのです。
実際のセリフ・文面
広島県警などが公表した、実際に使われたとされるセリフを紹介します。同じ言葉を聞いたら、迷わず詐欺を疑ってください。
「あなたが送っている荷物に現金とキャッシュカードが入っていた」
ここが見抜くポイント:日本郵便が荷物の中身について電話で個人に連絡することはありません。身に覚えのない荷物の話が出たら、その場で信じないでください。
「詐欺事件を捜査している」「家宅捜索であなた名義のキャッシュカードが見つかった」
ここが見抜くポイント:警察が電話だけで家宅捜索の結果や捜査状況を個人に伝えることはありません。
「金(きん)も調べる必要がある」
ここが見抜くポイント:資産を「調べる」ために現金や金を用意させたり、それを渡させたりする要求はすべて詐欺です。警察や検察が資産を預かることは絶対にありません。
「あなたにも逮捕状が出ている」(西区の事例)
ここが見抜くポイント:逮捕状の有無を電話で本人に伝えることはなく、まして現金の振り込みを求めることもありません。
今日からできる対策
✅ 「荷物に現金が」「捜査に協力を」という電話は、その場で切る(今日から) 郵便局員も警察官も、電話一本で資産の話を持ち出すことはありません。
✅ 電話を切った後、自分で調べた警察署・郵便局の代表番号にかけ直して確認する(5分) 相手が教えてきた番号ではなく、自分で調べた番号を使ってください。
✅ 「現金を用意しておいて」「金を買っておいて」と言われたら、誰にも渡さない 自宅に取りに来る、ATMで振り込む、いずれの方法でも警察や検察がお金や金を求めることはありません。
✅ SNSやビデオ通話で警察・検察を名乗る連絡が来たら詐欺と判断する 捜査機関がSNSで個人に資産の調査を依頼することはありません。
✅ 一人で判断せず、家族や警察相談専用電話「#9110」に相談する(今夜のうちに) 「誰かに話す」だけで、その場の思い込みから抜け出せます。
家族ができること
離れて暮らす家族は、今日中に次のことをしてください。
- 📞 「郵便局・警察・検察と名乗る電話は詐欺」と電話一本で伝える(5分)。複数の役が入れ代わる点が今回の特徴だと具体的に話してください。
- 🏠 「現金や金を自宅に用意するよう言われていないか」さりげなく聞く。すでに引き出しを始めていないか、通帳やATMの利用履歴を一緒に確認できると安心です。
- ☎️ 「知らない番号からの電話には出ない、出たら家族に相談する」ルールを決める。留守番電話やナンバーディスプレイの設定も一緒に済ませてください。
よくある質問
Q. 本物の警察や郵便局から電話が来ることもありますよね?どう見分ければいいですか?
A. 内容自体で見分けようとせず、いったん電話を切ってください。そのうえで自分で調べた警察署や郵便局の代表番号にかけ直せば、本物かどうか確実に確認できます。
Q. すでに現金や金を渡してしまいました。取り戻せますか?
A. 金(きん)や現金の手渡しは、振り込め詐欺と違い口座凍結による取り戻しができません。一人で悩まず、すぐ最寄りの警察署か警察相談専用電話「#9110」に相談してください。
もし被害に遭ったら
- 💬 消費者ホットライン「188(いやや!)」:お金にまつわる不安や、契約・支払いの相談ができます。
- 📞 警察相談専用電話「#9110」:詐欺かもしれないと感じたら、被害の有無にかかわらず相談できます。
- 🚨 110番:相手がまだ自宅にいる、これから現金や金を渡そうとしているなど緊急性が高い場合はためらわずに。
現金や金を渡してしまっても、自分を責める必要はありません。複数の役を演じ分けて信じ込ませるのが、この詐欺の常套手段です。

郵便局員、警察官、検察官と役を変えられると、誰でも「これは本当のことだ」と思い込んでしまいます。だまされる方が悪いのではなく、だます側がプロなのです。おかしいと感じたら、まず電話を切る。それだけで、あなたの財産は守られます。
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