「上場すればいずれ10倍、20倍になる」――そんな言葉で未上場株の購入を持ちかけられたことはありませんか。愛知県で1億5000万円がだまし取られたとされる事件から、手口と対策を解説します。
何が起きたか
2026年9月、愛知県警は投資会社の代表を務める男(39)を詐欺の疑いで逮捕したと発表しました。男は自らを著名な投資家であるかのように演出し、インフルエンサーとして活動していたとされています。
報道によると、男は会食で知り合った名古屋市の経営者の男性2人に、未上場企業への投資を持ちかけました。2023年5月ごろまでに、自身が代表を務める会社名義の口座へ計1億5000万円を振り込ませた疑いが持たれています。当時、男は東証プライム上場の旅行会社の取締役という肩書も持っており、その肩書を信用材料として利用していたとみられています。だまし取ったとされる資金のうち、約9000万円は別会社との金銭トラブルの解決に、約2800万円は自身の新株予約権の購入に充てられていたといいます。
未公開株(未上場株)を巡るトラブルは今回に限った話ではありません。金融庁も一般投資家に向けて「未公開株購入の勧誘にご注意を」と繰り返し呼びかけており、証券会社ではない業者から「上場予定があり、値上がりが確実」などと持ちかけられる事例が多発していると公表しています。
手口の解説
①【接触】会食や交友関係を通じて信頼関係を築く
初対面のいきなりの勧誘ではなく、会食や紹介を経てから話を持ちかけるため、警戒心が薄れやすいのが特徴です。
②【信用させる】著名な投資家・上場企業役員という肩書を利用する
「インフルエンサー」「カリスマ投資家」といった肩書や、実在する上場企業の役員という立場を示し、話の信ぴょう性を演出します。
③【金銭要求】「未上場企業の株は上場すれば10倍、20倍になる」と持ちかけ、指定の口座に振り込ませる
「特別に紹介する」といった言葉で、まとまった金額を自社名義などの口座に振り込ませます。

「肩書を信じたのに」と自分を責める人がいますが、責めるべきは肩書を偽って近づいた側です。人を信用させる話し方を研究し尽くしているのは、だます側のプロだということを忘れないでください。
実際のセリフ・文面
今回の事件や、金融庁・日本証券業協会が公表している事例では、次のようなセリフが使われています。
- 「未上場企業の株は上場すれば10倍、20倍にもなる」
ここが見抜くポイント:将来の値上がりを断言する投資話はすべて疑ってください。上場するかどうかは誰にも保証できません。 - 「あなただけに特別にご紹介します」「必ずもうかります」
ここが見抜くポイント:「あなただけ」「必ず」という言葉が出た時点で、正規の金融商品の説明ではありません。
(出典:日本証券業協会「未公開株詐欺」、金融庁「未公開株購入の勧誘にご注意を」)
今日からできる対策
✅ 証券会社以外から未公開株の勧誘を受けたら、その場できっぱり断る(今すぐ)
未公開株を販売できるのは、発行会社か金融商品取引業者として登録された証券会社に限られます。それ以外からの勧誘は原則すべて疑ってください。
✅ 「必ず上場する」「必ずもうかる」と言われたら詐欺だと判断する(今すぐ)
断定的な言い回しは、正規の金融商品の説明ではまず使われません。理由を確認する必要もなく話を切り上げてください。
✅ 勧誘してきた相手や会社が登録業者かどうか、金融庁のサイトで確認する(今夜のうちに、5分)
金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で検索すれば、登録の有無をその場で確認できます。
✅ まとまった金額を動かす前に、必ず家族か信頼できる人に相談する(今日から)
一人で決めない仕組みを作っておくことが、大きな被害を防ぐ一番の方法です。証券会社かたるメールに注意|LINE投資勧誘は詐欺で紹介した手口とも共通する「話を急がせる」パターンに注意してください。
家族ができること
離れて暮らす家族が、投資や副業の話で大きなお金を動かそうとしていないか、今日一度確認してみてください。
- 📞 「未公開株や未上場株の話が来たら、契約前に必ず相談して」と伝える(電話一本、5分)。契約後では取り戻すのが難しくなります。
- 💻 大きな送金や新しい投資話が出たら、金融庁の登録業者リストを一緒に確認する(所要10分)。家族と一緒に確認するだけで、冷静な判断がしやすくなります。
もし被害に遭ったら
- 💬 消費者ホットライン「188」(いやや):未公開株の勧誘や契約について相談できます。
- 📞 警察相談専用電話「#9110」:話を持ちかけられた段階でも相談できます。
- 🏛️ 証券取引等監視委員会の情報提供窓口(0570-00-3581):未公開株や投資話に関する情報提供を受け付けています。
- 🚨 すでに送金してしまった場合は110番、または最寄りの警察署へ:振込先の金融機関にも同時に連絡し、口座凍結を依頼してください。

肩書というものは、信じたくなるものです。「有名な人だから」「上場企業の役員だから」――それは人の心の自然な動きであり、恥じることではありません。ですが、まことの信用とは、肩書ではなく積み重ねた実績の中にしかありません。大きなお金を動かす前には、どうか一度立ち止まって、身近な人に話してみてください。