「いらない服があれば買い取ります」と訪問してきた業者に、気づいたら大切な指輪まで差し出してしまった――。これが「押し買い」です。結論から言えば、業者を撃退する一番の一言は「お引き取りください」。家に入れずその場で断り、もし契約してしまっても8日間は無条件でクーリングオフできます。
この記事でわかること
- 「押し買い」の手口と狙われやすい人
- 業者を撃退する言い方・断り方
- 契約してしまった後に取り消す方法(クーリングオフ・引渡し拒否)
いま何が起きているか
「押し買い」の相談は、今も年間7千件を超える高い水準で続いている。国民生活センターによると、訪問購入(押し買い)に関する相談件数は2023年度8,623件、2024年度7,909件、2025年度7,523件と推移し、2026年度も5月31日時点で826件(前年同期823件)とほぼ同水準で寄せられている(国民生活センター調べ、2026年)。
相談の多くは80歳以上の女性からのもので、「ふと目を離した隙に金のネックレスやダイヤの指輪を業者に持ち去られた」「一人暮らしの認知症の母が記念硬貨を安値で買い取られていた」といった深刻な事例も報告されている(国民生活センター、2024年9月18日発表)。だまされる方が悪いのではなく、だます側がプロなのだということを忘れないでほしい。
犯行の手口
押し買いは、最初の勧誘目的と実際の要求がすり替わっていく点が特徴だ。次の流れで「貴金属を売らせる」ところまで持ち込まれる。
①接触:「不用品を買い取ります」「寄付します」などの理由で訪問、または無料回収トラックを装って声をかける → ②査定名目で家に上げる:「査定だけでも」と言って室内に入り込む → ③本来とは違う物品を要求:貴金属や指輪の査定に話をすり替え、強引に勧誘する → ④契約・持ち去り:書面を交わさない、またはクーリングオフを無効と偽って安値で買い取り、持ち去る。

実際のセリフ・文面
国民生活センターと消費者庁の事例には、業者が実際に使った言葉が記録されている。この言い回しを覚えておくと、玄関先での一言で見抜ける。
- 「不用品を買い取り、貧しい国に寄付します」→ここが見抜くポイント:最初に告げた目的(不用品の処分)から、貴金属の査定に話をすり替えてくる。最初に言われた物以外を求められたら、その場で断る。
- 「査定だけでも見せてください」→ここが見抜くポイント:査定だけのつもりで家に入れると、強引な勧誘に発展しやすい。査定も必ず玄関先で行う。
- 「金は絶対暴落する。売るなら今しかない」→ここが見抜くポイント:「今だけ」「必ず下がる」と急かす言葉は、冷静な判断をさせないための典型的な手口。
- 「クーリング・オフは受け付けない」「指輪はもう別の業者に売って溶かしてしまった」→ここが見抜くポイント:クーリングオフを断る特約は法律上無効。期間内なら「返してください」と言い切ってよい(消費者庁 特定商取引法ガイド事例)。
今日からできる対策
- 突然の訪問には「依頼していません。お引き取りください」と玄関先で断る(1分でできる)
- 査定も契約も家の中に上げない。インターホンのドアを開けずに対応する
- 依頼した物以外(貴金属・指輪など)を求められたら、その場で即座に断る
- 契約してしまっても、法定書面を受け取った日から8日間は無条件でクーリングオフできる。今夜のうちに書面の日付を確認する
- クーリングオフ期間中は、物品をまだ業者に引き渡していなければ引渡しを拒否できる。「返してください」と伝えてよい
家族ができること
- 離れて暮らす親に「訪問してきた買取業者には何も渡さない・家に入れない」と今日電話で伝える
- 「不要品の処分は次に会ったときに一緒に決めよう」と約束し、一人で業者に対応させない
- 帰省したときに、見覚えのない契約書や業者の名刺が家にないか確認する
よくある質問
Q. 押し買いとは何ですか?
A. 自宅などを訪ねてきた業者が、貴金属などの物品を強引に買い取る訪問購入トラブルの通称です。特定商取引法の規制対象で、業者には勧誘前の告知や書面交付の義務があります。
Q. 一度承諾して契約してしまったら取り消せませんか?
A. 取り消せます。法定書面を受け取った日から8日間は、クーリングオフで無条件に契約を取り消せます。「クーリングオフできない」という特約があっても無効です。
Q. 業者が来たらどう断ればいいですか?
A. 「査定も契約もしません。お引き取りください」とはっきり伝え、家に入れないことが一番の対策です。不招請勧誘(頼んでいない訪問営業)自体が法律で禁止されています。
もし被害に遭ったら
一人で抱え込まず、すぐに次の窓口へ相談してください。
| 窓口 | 電話番号 | 相談できること |
|---|---|---|
| 消費者ホットライン | 188 | 契約・クーリングオフの相談、最寄りの消費生活センターへの案内 |
| 警察相談専用電話 | #9110 | 物品を持ち去られた、強引な勧誘を受けた被害の相談 |
| 緊急の場合 | 110 | 業者がその場に居座っている、危険を感じるなど緊急時 |

「不用品を買い取るだけ」と思って開けた玄関が、大切な指輪を失う入り口になってしまう。訪ねてきた人が親切そうに見えても、査定も契約も家に入れず、玄関先で「結構です」と言い切ってよいのです。もし渡してしまっても、8日間はやり直せます。一人で悩まず、まずは188に電話してくださいね。
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出典:
国民生活センター「きっかけは訪問購入?犯罪まがいの深刻なトラブルにご注意を!」(2024年9月18日)
国民生活センター「訪問購入(各種相談の件数や傾向)」
消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問購入」
消費者庁 特定商取引法ガイド 訪問購入トラブル事例